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博鰲フォーラム2014年年次総会開幕式における 李克強総理の基調演説(全文)
――博鰲アジアフォーラム2014年年次総会開幕式での演説
2014-04-11 08:53

   尊敬するご来賓の皆様、ご出席の皆様、友人の皆様

   うららかな春の季節に、52カ国・地域の友人たちと中国の美しい海南島に集まり、一緒に博鰲アジアフォーラム2014年年次総会に出席できたことを喜んでいる。ここに、中国政府を代表して、年次総会の開催に熱烈な祝意を表する。遠路はるばる訪れた来賓に心からの歓迎の意を表する。

   博鰲アジアフォーラムはすでに12回開催され、アジアに焦点を当て、世界に目を放つ重要なプラットホームになっている。「水清く魚豊か」、これは博鰲の特徴で、フォーラムの数々の成果の象徴でもある。今総会にはアジア太平洋とアフリカの複数の政府首脳、多くのビジネス界指導者とシンクタンク、メディア界の傑出した人びとが出席し、新旧の友人が一堂に会している。みんなアジアと世界の発展の大計のためにやってきた。回を重ねる毎に考えは新しく、交わりは深くなっている。皆さんが言いたいことを存分に言い、優れた見解を述べられるよう希望する。

   今日の世界は大きな変化のさなかにある。国際構造は新たな調整に直面し、世界と地域の情勢に影響する不確実、不安定要因が増え、ホットな問題が次々と起こり、多極化のプロセスは曲折をたどっている。世界経済は大きな調整が進んでおり、先進経済体〈エコノミー〉は新たな変化をとげたが、新興経済体は新たな挑戦〈試練〉を受け、それぞれの国の経済の行方はまちまちだ。世界的回復のプロセスは緩慢で難しく、成長の原動力は依然として不足し、経済の力強く、持続可能な、均衡のとれた成長の実現は任重くして道通しの状態だ。

   今日のアジアは発展の大事な時期にある。アジアは全世界で最も活力のある地域の一つで、経済規模は世界の3分の1を占め、人口は40億余りに上る。労働力が十分あり、後発の強みが顕著で、潜在力はまだまだ掘り起こされていない。同時に、アジアのほとんどは発展途上国で、一人当たりGDPは高くない。地域の発展水準は非常に不均衡で、なお7億人余りが国際的貧困ライン以下の暮らしをしており、経済発展、民生改善の任務は依然として並々ならぬものだ。アジア各国は古い問題を抱えるとともに、少なからぬ新たな悩みもある。アジアの問題を解決するには、結局のところ、発展に頼らざるを得ない。発展は世界を変え、未来を築く。発展は依然、アジア諸国の第一に重要な任務である。

   新たな情勢下で、アジアが発展の勢いを保つには源頭の活水が必要で、最も重要なのは新たな原動力を発掘することだ。今総会は「アジアの新しい未来:発展の新たな原動力を探し、放つ」をテーマにしいるが、これは大いに的を射たもので、アジアひいては世界にとって深い意義がある。ここで、いくつかの見解を示して、みなさんと意見交換したい。

   第一、共同の発展という大きな方向を堅持し、アジアの利益共同体を結成する。経済のグローバル化を背景に、アジア各国の発展は、一国だけよくなることはできず、「ゼロサムゲーム」であってもいけない。もちつもたれつの互恵協力で、「1+1>2」の相乗効果、さらには「2×2>4」の乗数効果を生むようにすべきだ。今日に至っても、世界的金融危機の影響はまだ残っており、先進諸国のマクロ政策調整はさらに発展をとりまく環境の複雑さを増大させた。一部アジア諸国の経済は成長が落ち、インフレが進み、さらには資本の流出、通貨下落現象さえみられ、国際的に新興経済体はよくないという声が再び起こっている。これらの新たな状況や問題を前にして、アジア諸国は引き続き同舟相救い、共に難局を乗り越え、経済の相互補完性を発展のための相互援助力に変え、たえず利益の接点を拡大し、互恵・共存、相互利益・ウィンウィンを実現すべきである。

   過去10年余り、アジアの域内貿易の規模は1兆ドルから3兆ドルに拡大し、地域各国の貿易総量に占める比率は30%から50%に上昇したが、欧州連合(EU)と比べれば、なお大きな開きがある。域内経済の一体化は地域各国の共通の利益であり、われわれは一致協力して貿易の自由化と投資の円滑化を促し、地域と亜地域の協力レベルを引き上げるべきだ。東アジア地域包括的経済連携(RCEP)はアジアで参加メンバーが最も多く、規模が最も大きい貿易協定交渉で、既存の成熟した自由貿易圏を統合するものだ。RCEPは強い包容性をもち、アジアの産業構造、経済モデルと社会的伝統の現実に合っており、また漸進的方法をとり、加盟国の異なる発展水準をも考慮し、他の地域貿易取り決めを排していない。中国は各国とともに、交渉を積極的に推進する用意がある。これと同時に、アジア太平洋地域の貿易・投資利益の最大化を実現するため、アジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)の実行可能性研究(FS)のスタートを考慮してもよい。中国は「環太平洋戦略的経済連携協定」(TPP)に対しオープンな態度をとっており、世界貿易の発展にプラスで、公平で開放的な貿易環境にプラスであるかぎり、中国はその成功を願っている。われわれはあくまでもグローバルな貿易の発展における多国間貿易体制、世界貿易機関(WTO)の主導的地位を守っている。RCEPとTPPは多国間貿易体制の重要な補完物となるべきで、両者は同時に進めても矛盾せず、相互に促進することができ、RCEPが2015年に合意に達するよう希望する。皆が柴を拾って燃やせば炎は高くなる〈皆が力を合わせれば良い結果が出る〉という。地域の各国が一致協力しさえすれば、アジアは引き続き世界経済の重要なエンジンの機能を果たすことができる。

   第二、統合による発展の大きな枠組みを構築し、アジア運命共同体を形成する。アジアの共同の発展を実現する根本的活路は経済の統合にある。アジアのすばらしい未来を築くには、各国自身の発展に頼らなければならないが、それ以上に地域の共同の進歩に頼らなければならない。中国に「単絲は線に成り難く、独木は林にならず」〈1本の糸で紐は編めず、1本の木で森は造れない〉ということわざがある。地域諸国は各分野の実務協力を深め、開放の過程で統合し、統合の過程で発展し、経済連係の絆をしっかり結び、革新・発展のチャンスをしっかりとらえ、発展における自らの運命を握るようにすべきだ。

   インフラの相互接続・乗り入れは統合による発展の基本的条件だ。地域の各国は手を携え、鉄道、道路、航空、水運などのインフラ建設を加速すべきである。中国は関係諸国とともに、バングラ中国インドミャンマー経済回廊、中国パキスタン経済回廊を計画・建設し、中国ASEAN自由貿易圏のバージョンアップ版を築く用意が出来ており、今年はさらに、「シルクロード経済帯」と「21世紀の海のシルクロード」建設の重要な諸プロジェクトを推進する。中国は域内・外の関係各国とアジアインフラ投資銀行の設立準備の協議を急ぎ、早期正式設立をめざす用意ができている。産業の相互接続・補完は統合による発展の主要な内容である。各国は相互に隣接する地理上の強みを生かし、川上、川中、川下全産業チェーンの深い協力を推進して、優位性の相互補完に基づく産業ネットワークと経済システムを形成すべきである。アジア経済の運命は改革・革新と構造調整によって決まる。各国は世界の新技術革命という大きなすう勢に沿って、相互交流を強化し、互いに経験を参考にし、科学技術の進歩と人材とりわけ若い人材の養成を促進し、グリーン・エネルギー・環境保護、インターネットなどを重要な内容とする「新経済」〈ニューエコノミー〉の発展を推進し、今後の発展のための高地〈優勢な位置〉を占領し、産業と経済の競争力を引き上げるようにすべきだ。それは地域の永続的発展のための内的原動力の増強に役立つだけでなく、世界経済回復の新たなチャンスをももたらすだろう。

   第三、平和的発展のための大環境を守り、アジアの責任共同体を築く。地域の混乱は禍で、周辺の安定は福だ。アジアの進歩は平和で安定した地域環境のおかげで、平和と安定はアジアの発展の基礎的保証である。60年前、中国、インド、ミャンマーが共同で提唱した「平和共存5原則」はすでに国際関係の基本的準則〈規範〉になっている。それは東洋の英知に満ちており、人類の文明に対する重要な貢献でもある。われわれは平和共存の理念を代々伝えていくべきだ。遠親は近隣に如かず、近隣は友隣〈よき隣人〉と成る可しという。アジアの平和と安定を実現するには、地域の諸国が共通認識を結集し、積極的に行動し、果たすべき責任を共同で担う必要がある。各国は安全保障の対話と協議を推進し、災害管理、海上捜索・救助、テロ対策、国際犯罪取り締まりなど非伝統的安全保障分野の協力を強め、アジアの地域的安全保障協力の枠組みつくりを積極的に検討すべきである。

   ここで、中国が引き続き平和的発展の道を歩み、善隣友好の周辺外交政策をとることを強調しておきたい。同時に、自国の領土主権を守る意思は揺るぎないもので、平和的手段で紛争を解決するとの主張も明確なものだ。海上の協力を強める積極的行動については、われわれは全力を傾けてこれを支持するだろう。南海の平和・安定を破壊する挑発行為に対しては、われわれは果断に反応するだろう。中国人は昔から、「徳に報ゆるに徳を以てし、怨みに報ゆるに直を以てす」ことを重んじており、われわれは情義を重んじ、友人に不義理をすることはない。われわれは原則を重んじ、根本的立場を揺るぎなく守る。南海の平和・安定は中国を含む周辺諸国の共通の利益に合致しており、中国は「南海各国行動宣言」(DOC)の枠組み下で、「南海行動規範」(COC)協議のプロセスを着実に進め、南海の平和・安定と航行の自由を共同で守る用意ができている。中国は平和を大切にし、発展を渇望しており、地域の各国と共に平和で、繁栄する、開放的なアジアの建設に力を尽くし、政治的相互信頼をたえず増強する中でアジア周辺の平和、安定と安寧を守ることを願っている。

   ご在席の皆様

   アジアの発展は世界の将来にかかわり、中国の発展はアジアと深いかかわりがある。

   経済を適正なゾーンに維持することは、中国の当面のマクロコントロールの基本的要求で、中長期的な政策の方向でもある。今年の経済成長の予測目標は7・5%前後だ。前後である以上、上下の幅があり、成長率が7・5%より少し高くても、または少し低くても、比較的十分な雇用を確保でき、大きな波が生じさえしなければ、すべて適正なゾーンに入る。関係方面の統計データによると、目下、都市・町の就業は増え続け、個人所得、企業収益、財政収入は穏やかに伸びており、物価総水準〈総合物価指数〉は全体的な安定を保ち、社会全体の電力使用量の伸びはいくらか回復し始め、構造調整にはいくつかの前向きの変化がみられる。中国経済のスタートは穏やかで、全体的に良好だ。しかし、経済を安定させつつ好転させるための基礎はまだ強固でなく、下振れ圧力は依然として存在し、いくつかの面の困難は過小評価できない。これらの問題は複雑で錯綜した国際的大環境が影響した結果であるとともに、国内経済の深層部の矛盾の表面化と成長速度切り換え(economic slowdown)期の客観的反映でもある。

   何事も事前に準備すれば成功する。当面の複雑な情勢を前にして、われわれは冷静に観察し、定力〈じょうりき心を乱されない力、集中力〉を保つとともに、転ばぬ先の杖ことば通り、主動的に物事を進めていく。マクロコントロールでは〈需給の〉総量均衡をうまくはかり、それ以上に構造の最適化に着目し、情勢の変化に合わせて、コントロール政策の度合いを適正に加減し、狙いを定め、差別化した措置を適時に講じていく。昨年われわれは実践の中で、マクロコントロールの道筋と方法を刷新し、新たなコントロールの経験を積んだ。われわれは経済の一時的変動のために短期的な強い刺激政策をとることはなく、中長期の発展を一層重視し、中国経済の持続的健全な発展の実現のために努力する。われわれはすでに決めた方針および保有する政策手段で、生じうるさまざまのリスクや挑戦に対応できる。中国の発展には大変強い靱性がある。われわれには経済を適正なゾーンに維持する能力があり、自信もある。

   中国経済が好転を続ける条件はある。中国経済は規模が大きく、外貨準備が多く、新しい型の工業化、情報化、都市化(町を含む)、農業近代化を協調的に進めており、行動の余地は大きく、市場空間は広大だ。とりわけ中・西部と東北地区の人口は全国の60%以上を占め、一人当たりGDPが5000ドル余りに達したばかりで、都市・農村間、地域間の格差縮小がもたらす成長潜在力は極めて大きい。すでに打ち出されたか、今後次々に進められる一連の改革促進、構造調整、民生向上の政策措置は成長の安定作用を果たし続けるだろう。

   基礎がしっかりしてはじめて着実に成長でき、原動力が十分あってはじめて遠くまで走れる。中国経済の成長安定には基礎があり、今後しばらく中高度成長を維持するよい条件があるだけでなく、発展を続けるための尽きることなき原動力を備えている。今総会のテーマは、新たな原動力を探すことで、われわれは多方面の施策をとり、次の三つの面で重点的に努力する。

   第一は改革に原動力を求める〈改革によって原動力を得る〉こと。市場には巨大な活力が秘められ、人民には無限の創造力が秘められている。われわれは引き続き行政簡素化・権限委譲の度合いを強め、政府権限リスト制度をつくり、ネガティブリスト管理方式を模索し、中国上海自由貿易試験区などの建設を通じて、有益な経験をまとめ、他の地域へコピーし、推し広めていく。これは市場参入の緩和、よりよいビジネス環境づくり、公平な競争の奨励、法治経済建設に有益であり、改革のボーナスをより多く生み出し、社会の創造活力をほとばしらせ、市場の予測を安定させるだろう。開放も改革であり、開放は改革を促進できる。われわれは新たな、高水準の対外開放を重点的に推進する。一つの重要な側面は、資本市場を含むサービス業の対外開放を拡大することだ。例えば、積極的に条件を整えて、上海と香港の株式市場の取引相互接続・乗り入れの仕組みをつくり、中国内地〈大陸本土〉と香港の資本市場の双方向開放と健全な発展を一段と促進する。われわれは国際市場とより深く統合し、対外開放の段階と水準をたえず引き上げていく。

   第二は構造調整に原動力を求めること。都市・農村間、地域間の格差縮小と産業構造の不合理解決などの問題をめぐり、構造改革によって構造調整を促進する。サービス業という「短板」〈注〉の補充を急ぎ、「営業税の増値税転換」実験を郵便・通信などより多くのサービス分野に拡大し、租税などのテコを使って生産および生活サービス業を育て、大きくし、社会の資本をより多く活用して、老後、健康、観光、レクリエーションなどのサービス供給を増やす。人間を核心にした新しい型の都市化計画を実行に移し、都市・農村間と都市内部の二元構造打破問題から始めて、移転人口の市民化を秩序立てて進め、政府の支援度強化と市場手段の活用を結びつけて、各種のバラック地帯をより大規模に改造する。われわれは沿海から内陸への重層的発展を推進し、黄金水路長江と重要な陸路交通幹線に依拠して、新しい経済サポート帯を育成する。中・西部地区の鉄道、道路など交通インフラ建設を重点的に進め、産業移転のための有利な条件を整える。さらにグリーン産業、新エネルギー、省エネ・環境保護技術と製品の開発を積極的に推進し、新たな成長点を形成し、この過程で遅れた生産能力を断固として淘汰し、資源・環境のネックによる制約を緩和する。新興産業におけるベンチャーキャピタルの呼び水となる政府資金の規模を拡大し、イノベーションがもつ発展駆動機能を発揮させ、わが国産業のミドル・ローエンドからミドル・ハイエンドへの前進を促し、生産要素の産出率をしっかり高める。

   第三は民生改善に原動力を求めること。発展の目的は民生にある。中国の13億人は世界最大の消費市場であり、需要の「富鉱」〈高品位鉱〉でもある。民生の改善に伴って、経済成長を牽引する内需の機能はたえず強まるだろう。われわれは経済の発展に伴い、それに並行して人民の収入を高める必要があるが、就業は収入の源で、民生の本であり、われわれは一層積極的な就業・起業政策をとり、大学卒業生、失業者の就業・起業に対する税財政・金融支援とサービスの度合いを強める。われわれは企業所得税半減政策の恩恵を受ける小・零細企業の範囲の上限を、年間課税所得額6万元(1元=約16円)から10万元へと大幅に引き上げた。また自営業者や企業の就業受け入れに対し一部の租税を減免する政策を一段と実行し、就業・企業の拡大を通じて個人所得の持続的向上を促進することにしている。われわれは社会保障制度の整備を推進し、公共サービスシステムを整えて、大衆の後顧の憂いを取り除くようにする。個人の消費を奨励する総合政策をとり、個人の消費能力を高め、商品・サービス消費を拡大し、流通コストを引き下げ、経済発展を支える消費の機能をよりよく発揮させる。

   30余年の急速な成長を経て、中国経済はすでに質的向上・効率増大・高度化の新たな段階に入っている。われわれは山や川を越えるだけでなく、遠くまで着実に歩んで行き、幾億もの人民の勇気、知恵と力を集めて、引き続き「中国物語」の新たな章を書き、中華民族の大復興という中国の夢を実現しなければならない。

   ご在席の皆様

   われわれは相互依存の時代に暮らしており、世界が今日のように密接につながったことはなく、アジアが今日のように協力・ウィンウィンを必要としたことはない。衆知を集めることこそ、真の成功の道だ。アジアの各国は密接に協力し、地域の平和・安定を守り、地域発展の大業を共に支え、われわれ共同のふるさとを立派に建設し、また世界の平和、発展、協力により大きく貢献すべきである。中国は永遠にアジア各国と栄辱、苦楽を共にし、一緒にアジアの発展の新しい未来を切り開いていく。

   最後に、今総会の成功を祈る。遠路はるばる訪れた来賓のみなさんと総会に出席された友人の皆さんの仕事が順調で、生活が楽しく、身体が健康であるよう祈る。

   ご静聴ありがとうございました

 〈注〉細長い板を並べて円筒形の側(がわ)をつくり、底板をはめて、たがでしめたものが桶だが、その桶をつくる板に長短があるとした場合、水を入れると短い板の部分から水が漏れる。そのことから「短板」は相対的に弱い部分の意味で使われている。

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